ワインを開けるとき、コルク栓を開けなければいけないものと、金属製のスクリューキャップをカチカチッと開けるだけのものがありますよね。
なんとなくスクリューキャップは安物、コルクは高級品というイメージはないでしょうか?
お店で奮発して注文したワインがスクリューキャップでげんなりしたという話もよくありますが、スクリューキャップの良さを知れば、スクリューキャップのことを好きになれるかもしれませんよ。
ちなみに、私はスクリューキャップ大好きです!
スクリューキャップとは
ワインにつける金属製の蓋のことで、ペットボトルのようにカチカチッと回して開けるのが特徴です。
スクリューキャップはいつから登場したか
2000年にオーストラリアで登場し、まずは白ワインに採用されました。
そのあとオーストラリアの赤ワインやニュージーランド、チリ、フランス(シャブリ地区)、ドイツなどへと広がっていきました。
スクリューキャップの割合
発祥の地となったオーストラリアやニュージーランドでは、99%がスクリューキャップです。
その他の新世界(アメリカやチリ、南アフリカなど)でもそれなりのシェアを占めています。
伝統的なワイン生産国であるヨーロッパの国々で最もシェアが高いのはドイツです。
フランス、イタリア、スペインでのシェアはそこまで高くなく、これらの地域の高級ワイン産地ではほとんど普及していません。
これらの国でイマイチ広がらない理由は、後述するデメリットにあります。
スクリューキャップのメリット
ブショネ(コルク臭)が発生しない
スクリューキャップ最大のメリットは、なんと言ってもブショネ(不良コルクによる欠陥臭)対策です。
ブショネについてはこちらの記事にも記載しています。
簡単に言えば、「不良品のコルクが数%程度混じっており、これに当たると飲めたものではない。」というものです。
お客さんにこのようなワインを提供しないため、ソムリエが事前にテイスティングして検査するのですが、もっと簡単な方法があります。
それは、「コルクを使わないこと」です。
ブショネの原因は天然コルク中の微生物なのですから、天然コルクを使わなければ問題は起きません。
これにより数%の不良品(損害)がゼロになりますから、生産元や店では数%分の利益が出るのと同じです。
それによって、お客さんに若干安い価格で提供することができるようにもなります。
開けるのが楽
あまりワインを飲んだことがない人だと、コルク抜きをうまく使えなかったという経験があると思います。
コルク抜きに関しては、そもそも持っていないという人も多いのではないでしょうか?
また、年代物のワインはコルクがぼろぼろになっていて、スクリューを刺すとコルクが崩れてしまい、ワインに大量のコルクカスが入ってしまうというケースはよくあります。
スクリューキャップであればこのような危険性はなく、コルク抜きを買う必要もないので、開けやすさについては大きなメリットです。
なおコルクを抜く方法については図解がありますので、そちらをご覧ください。
ワインの保存が楽
ワインの劣化を防ぐために、温度や湿度に注意する必要があるのは有名かと思います。
詳しくは以下の記事で解説していますので、ご確認ください。
スクリューキャップの場合、温度についてはどうにもなりませんが、湿度についてはコルクのように神経質に管理する必要はありません。
コルクは天然の木のため、湿度も高めで一定にしなければ強度が下がりますが、スクリューキャップにはそのような縛りはありません。
温度や日光だけ気にしておけば良いため、管理費が下がります。
スクリューキャップのデメリット
スクリューキャップの唯一にして最大のデメリットは、高級感がないことです。
想像してください。「今日プロポーズをする!」と決めて最上階の高級フレンチを予約し、かなり無理して頼んだ1本5万円のワインをソムリエが持ってきて、カチカチッ!という音を立ててスクリューキャップを開けられたら・・・。
ちょっとムードが良くないですよね。
ワインに高級なイメージを持つ人は多く、高級店の場合はソムリエが熟練の手さばきでコルクを抜いてくれるところまでが1セットというイメージがあります。
いくら素晴らしいワインでも、頼んだことを後悔してしまいそうです。
実際、過去にフランスの高級ワインでスクリューキャップの検討がされたことがあるようですが、高級感を欠くという背景から採用は見送られています。
スクリューキャップのワインの熟成について
一概にメリット・デメリットでは表現できませんが、スクリューキャップはコルク栓と違った熟成をします。
熟成メカニズムを整理するとわかりやすいので、解説しますね。
コルクとの構造的な違い(ヘッドスペース酸素量の違い)
ワインの熟成に大きな影響を及ぼすのは酸素です。
まずはワインの中に存在する酸素について見てみましょう。
図にあるように、もともとワイン中に存在している溶存酸素はごく微量なうえ、ワインを詰めるときに管理されている場合がほとんどです。
一方、ヘッドスペースと呼ばれる部分は完全に気体が存在しているため、酸素量が多くなります。
この部分にどれだけの気体が入っているかが熟成速度に大きく関わります。
スクリューキャップとコルク 短期的な熟成速度の比較
ここで、次の図を見てみましょう。
コルクは瓶の内部に打ち込むようにして密閉するため、ヘッドスペースがかなり無くなります。
製造直後のワインでは、大体0.5~1cmくらいになっています。
一方、スクリューキャップは上に蓋を乗せるだけのため、3~4cm程度のヘッドスペースができます。
つまり、製造直後から入っている気体の量が、3~8倍程度多いのです。
この差によって、スクリューキャップのワインでは、充填直後からしっかり熟成がされ、割と早い段階で飲み頃に差し掛かることがあります。
一方でコルクのものは徐々に熟成していき、早い段階では渋さが際立つものが多いです。
スクリューキャップとコルク 長期的な熟成速度の比較
意外なことにスクリューキャップの方が短期的には熟成が早い結果でした。
しかし長期視点ではまた傾向が変わります。
次の図を見てください。
このように、スクリューキャップは外からの酸素を一切通しませんが、コルクは少しずつ通します。
つまり、コルクの場合は熟成に必要な酸素が少しずつ増えていくのに対し、スクリューキャップは最初の状態から変わらないのです。
これによって、スクリューキャップのワインはあるところで熟成が急にゆっくりになり、コルクの方が熟成が進むようになります。
このような熟成の傾向もあって、熟成を前提とした高級ワインではスクリューキャップを使わないのかもしれません。
スクリューキャップの特徴 まとめ
スクリューキャップの特徴は以下の通りです。
メリット:ブショネがない。開けやすい。管理しやすい。
デメリット:高級感がない。
熟成:短期的には熟成しやすいが、長期的には熟成しにくい。
いかがでしたか?
味わいだけでなく、TPOを考えて注文すれば、スクリューキャップの良さを感じることができると思います。
私は楽しみに取っておいたワインがブショネだった経験があり、それから一気にスクリューキャップのことが好きになりました。
うまく使い分けながら、ワインライフを充実させてください。
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