「ブラインドテイスティング」と聞くと、どのようなイメージを持ちますか?
この香りは・・・シャトー シュバルブラン 1982年ですね!
こんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?
実はこれ、神の雫というワイン漫画のイメージが独り歩きしているものと思われます。
また有名な番組で、芸能人が「AとBのワインはどちらが高級?」と聞かれているイメージが強い方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際のブラインドテイスティングには、次のような2種類の目的があります。
目的①:ワインのブランドや価格を隠して飲み、ワインのポテンシャル(味や香りなど)を、先入観なく正しく評価する。
目的②:ワインを飲み、品種・生産地・収穫年を当てるゲームを行う。
冒頭の銘柄あてのイメージは②に近いですが、さらに難易度が高く、実際に人間が行うのはまず不可能です。
今回は実際のブラインドテイスティングについて解説します!
ワインの情報を隠し ポテンシャルを評価する
通常、ソムリエが「ブラインドテイスティング」と言えば、多くの場合はこの意味で語られます。
お店に出すワインを決める時など、ワインのポテンシャルを公平に判断したい時に使う手法です。
なぜブラインドテイスティングが必要なのか、詳しく解説します。
ワインは先入観で味が変わる
ワインに限らずですが、人間は「これは高級で素晴らしいものですよ」と言われると、その通りに感じてしまうものです。
例えばあなたが美術館でパヴロ・ピカソの絵を見せられたとしたらどう思うでしょうか?
おそらく「おぉ・・・すごい・・・」と思うのではないでしょうか?
では、具体的にピカソの絵のどこの品質が高く、総合的に見てどの程度すごい絵なのでしょうか?
おそらく、説明できる人は非常に少ないと思います。
僕は全くわからない・・・。(笑)
逆に本物のピカソの絵が、「作者不明で額にも何も入っていない状態」で商店街のバザーで50円で売られていたとしたらどうでしょうか?
普通に考えれば、数千万~数億円の絵が50円で売っていたら、間違いなく買いますよね。
でも、ほとんどの人はこの絵の価値に気づかず通りすぎてしまうでしょう。(失礼)
つまり人は「高級です」と言われれば高品質に見えるし、「安い」と言われれれば低品質に見えてしまうものなのです。
これを認知バイアスと言います。
ワインの話に戻りますが、プロのソムリエでも同じようなバイアスにとらわれることは多いです。
高級ワインの空瓶に安いワインを入れると、プロであっても「高級感のある味わいだ・・・」と感じてしまうのです。
白ワインを赤く着色したら、「赤ワインだ!」と言ってしまうソムリエも多いよ。
バイアスにとらわれずに品質を評価する
バイアスによって感じ方が大きく変わることは前述の通りです。
それでは、どうすればバイアスに囚われずに品質を評価できるのでしょうか。
答えは簡単で、事前情報がなければ良いのです。
ワインであれば、事前に品種も産地も収穫年も価格もわからなければ、先入観の持ちようはありません。
「香りが芳醇だ」「酸味が豊かだ」などをただ感じて、総合的に品質の良さや料理との相性を確認していくのです。
これがブラインドテイスティングの最も重要な目的です。
品種や産地を当てるゲームを行う
ブラインドテイスティングのふたつめの目的として、品種や産地を当てるゲームを行うというものもあります。
ゲームというと軽く聞こえますが、ソムリエ協会やワインスクールを初めとして、たくさんの団体がコンテストを開催しています!
私もコンテストに挑戦中です!
トップクラスのテイスターであれば、品種や産地だけでなく、収穫年・ワイナリー・畑の名前までピタリと当てることもあります。
クイズ大会のような感じで、コンテストはいつも大盛り上がり!
品種や産地を当てるときの考え方
品種や産地を当てる時にも、まずは1つ目のブラインドテイスティングのように、先入観なしで様々な情報を集めます。
色味はどうか、どんな香りがするか、アルコール度数は、酸味の強さは…などです。
これらの情報を合わせ、矛盾せずに説明できる品種や産地を考えていきます。
例えば、「ワインに塩味があるから海岸沿いの産地で、度数が13.5%程だから温暖、花の香りがあるから…アルバリーニョが本命か…?あとはなんだろう…。」のように、理論的に考えていきます。
ワインが持つ特徴を正確に集め、品種や産地を絞る広く深い知識が必要です。
ソムリエ・ワインエキスパート二次試験のブラインドテイスティング
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験でもブラインドテイスティングが行われます。
この目的はワインを味わって品質を正確にコメントすることが8割。
つまり最初に説明した方の、品質評価のためのブラインドテイスティングです。
最後に少しだけ品種や産地を当てるクイズがあります。
しかし、実際には少なくない受験生が2つ目の目的「品種当てゲーム」に走ってしまいます。
品種当てゲームに走ると、ワインを正確に表現出来なくなり、試験に受かる確率は減ります。
「きっと○○という品種だ!」⇒バイアスにかかる⇒「○○という品種なら、こういう香りのコメントになるはず!」⇒品種を間違えて全滅。
こういう流れが多いのです。
極力バイアスにかからないようにしつつ品種を当てにいき、間違えても一定の点数が取れる方法は当ブログでまとめています。
受験生の方は一度読んでみてくださいね。
いかがでしたか?
実際にやってみると、ブラインドテイスティングは知識や集中力を必要とし、ゲームとしても楽しめます。
ワインの新しい味わい方もできるので、ぜひ一度やってみてくださいね。
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