ソムリエ・ワインエキスパート資格の二次試験はブラインドテイスティング。
基本的には「きちんとテイスティングコメントを書く能力があるか?」を確認する試験なので、品種・生産地は正解しなくても受かります。
しかし近年は受験者のレベルも上がり、できれば正解しておきたいのも事実。
そこで、どうやってブラインドで品種と産地を当てるか、具体的なメソッドを解説します。
テイスティングの行程ごとに、ワインエキスパートの思考方法を解説していくよ!
今回は頻出品種である「カベルネ・ソーヴィニヨン」について解説します。
味覚・嗅覚は人によって差があるため、今回の解説が全員に当てはまるわけではありませんが、考える道筋として参考にしてください。
↓品種別ブラインドテイスティング解説はこちら
カベルネ・ソーヴィニヨンの基本情報
名称 | カベルネ・ソーヴィニヨン |
外観 | 濃いダークチェリーレッド |
香り | 黒系果実、スミレ、ピーマン、スギ |
味わい | 豊かな酸味とタンニン |
見分けるポイント | 外観・香り・味わいから総合的に判断 |
フランス 南西地方原産のブドウ品種で、世界中で栽培されています。
果皮が厚く温暖な気候を好み、病害にも強いことからほぼすべてのワイン産地で栽培されています。
スギ・ミントのような清涼感あるアロマと、ピーマンのようなグリーンノート、豊かな酸と豊富なタンニンが特徴的です。
試験に出た場合、候補となる生産地はアメリカ、オーストラリア、チリ。
カベルネ・ソーヴィニヨンで最も有名な産地はフランス ボルドー地方ですが、ボルドーワインはまず出ないので試験的には除外して考えます。
ボルドーワインが出ない理由:二次試験には、「各地方の典型的なタイプの単一品種ワイン」が出題されます。しかしボルドーワインの典型的なスタイルはブレンドであるため、二次試験の出題方針に合いません。そのため、過去にほとんど出題されたことが無いのです。
カベルネ・ソーヴィニヨンをブラインドで当てる方法
当サイトで考える当て方は、外観(全体) ⇒ 外観(エッジ) ⇒ 香り ⇒ 味わい ⇒ 香り&味わい という順番で行う方法です。
「香りと味わいを2回見るのはなぜ?」と思われるかもしてませんが、香りはオルソネーザル(飲む前に鼻から入ってくる香り)とレトロネーザル(飲んだ後に喉から上がってくる香り)に分かれます。
それぞれ印象が変わるため、両方を使って情報を集め、総合的に判断できるようにしておきましょう。
外観(色調)で選択肢を挙げる
まずは外観を確認します。
ざっくり①グラスの向こうがしっかり透けて見えるレベルで明るく、赤みを帯びた色調か?②グラスの向こうが見えにくく、紫みを帯びた色調か? 捉えましょう。
カベルネ・ソーヴィニヨンは産地に関わらず②です。①であれば、他の品種を考えましょう。
外観で「カベルネ・ソーヴィニヨンかも?」と考えられる色調であれば、次に示す品種も候補として残しておきます。
候補となる品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、シラーズ、テンプラニーリョ、サンジョヴェーゼ
シラーとシラーズは同じ品種だけど、試験に出てくるものは別で考えた方が理解しやすい!
外観(エッジの色)で選択肢を一部除外する
グラスをやや傾け、ワインの中央とエッジ(端)の色調差をよく確認します。
エッジの色は熟成度合いに応じて変化するため、ここで候補を一部絞ります。
①エッジが非常に強い紫であればシラーが濃厚、③エッジに茶色っぽさがあれば熟成しているため、テンプラニーリョやサンジョヴェーゼが濃厚です。
カベルネ・ソーヴィニヨンの可能性が高いのは②のとき。
エッジの確認は非常に重要なため、ローヌのシラー、アメリカのカベルネ・ソーヴィニヨン、テンプラニーリョ(レゼルバ)をテイスティングし、エッジの色調を覚えておきましょう。
この時点で下記まで絞り込みを行います。
候補となる品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーズ
香りで産地の候補を探る
カベルネ・ソーヴィニヨンの場合、ここから先がやや難しくなります。
香りで品種を絞りに決めにいけないため、味わいとセットで産地も含めて考える必要があるためです。
まずは「ピラジン(ピーマンの香り)があるか?」を注意して捉えます。
その結果、ピラジンの程度に応じて下記のように分類します。
感じられない | ピラジンの香りがある | ピラジンが強い |
カベルネ・ソーヴィニヨン (アメリカ) シラーズ(オーストラリア) メルロー(アメリカ) | カベルネ・ソーヴィニヨン (オーストラリア) メルロー(チリ) | カベルネ・ソーヴィニヨン(チリ) |
順番に見ていきましょう。
ピラジンが強い場合
まず、ピラジンが顕著に強い場合です。
この場合、まず疑うのはチリ。
チリはテロワール(土地性)的にピラジンが出やすく、さらにカベルネ・ソーヴィニヨンもピラジンが強い品種のため、掛け合わせると強く感じるのです。
↓このワインなどは、分かりやすくチリのカベルネ・ソーヴィニヨンのピラジン感を持っています。
ピラジンの香りがややある場合
この場合、オーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンが濃厚ですが、チリのメルローも十分に可能性が考えられます。
そこで次に気にするのが味わい。
アルコールの度数を判別して13.5~14.0%程度であれば、オーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンが濃厚となります。
チリのメルローの場合、試験的には13%前後のものが多いです。
アルコール度数で大まかにあたりを付け、最後はもう一度香りを確認します。
オーストラリアの場合、香りにややユーカリやメントールのような甘みを伴った清涼感があります。
さらに樽の香りにも着目し、チリであれば木を焦がしたような香りが出るものが多いです。
度数・清涼感・木樽の香りを総合的に判断し、チリのメルローかオーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンかを決めます。
ピラジンの香りが無い場合
この場合、産地として真っ先に疑うのはアメリカです。
アメリカではピラジンの香りが消費者に好まれないため、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー問わず、とにかくピラジンを抑える造りをしています。
また、オーストラリアのシラーズもピラジンの香りはありません。
さらに厄介なことに、これら3種のアルコール度数は13.5~14.0%付近が多いため、アルコール度数で見分けることもできません。
したがって、この場合はまず木樽の香りに着目し、①ココナッツ系の香り(アメリカンオーク)か、②ナツメグの香り(フレンチオーク)かを調べます。
アメリカワインの場合、試験的に中心にくるのはアメリカンオークの香りとなります。
ナツメグの香りが優位になっていれば、アメリカ以外の可能性が高くなります。
さらに、シラーズであればやや獣的な香りがあるはずです。
これらの香りを頼りに、まずはアメリカのメルローかカベルネ・ソーヴィニヨンかまでは絞り込みます。
そのうえで味わいを確認し、タンニンと酸味を確認しましょう。
品種の特徴として、カベルネ・ソーヴィニヨンはメルローより明らかにタンニン・酸味ともに強いです。
アメリカワインの場合はタンニンが少しわかりづらいですが、酸味に着目してメルローかカベルネ・ソーヴィニヨンかを判別します。
ブラインドテイスティングを鍛える方法
ブラインドテイスティングを鍛える方法は、なんといってもブラインドテイスティングをたくさん行うこと。
ブラインドで飲むことにより、少しでもワインから情報を得ようとするクセをつけましょう。
たくさんの種類をブラインドで練習するには、ヴノテラスのブラインドセットが最もコスパが良かったです。
少し値は張りますが、回答用紙や講師の模範解答も届き、本番さながらのテイスティングをすることができます。
ただしブラインド小瓶セットは二次試験が近くならないと販売されません。
それまでの間は下記のような品種別ワインのハーフボトルセットをお勧めします。
カベルネ・ソーヴィニヨンの模範回答
最後に、カベルネ・ソーヴィニヨンと思われるワインが出題された場合に選ぶべき、オススメの回答をご紹介します。
ここまで解説したように、カベルネ・ソーヴィニヨンを正解に持っていくためにはそれなりに経験と知識を必要とします。
ただしテイスティングコメントの正解としては、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーズ 全て共通の項目が正解になるため、満点が狙える可能性もあります。
模範解答をしっかり記憶しておきましょう。
外観のおすすめ選択肢
項目 | 表現 |
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | 紫がかった、ガーネット/ダークチェリーレッド |
濃淡 | 濃い |
粘性 | やや強い |
印象 | 成熟度が高い、濃縮感が強い |
香りのおすすめ選択肢
項目 | 選択肢 |
第一印象 | 開いている、強い |
特徴 | 果実:カシス、ブラックベリー、ブラックチェリー 花:スミレ、牡丹 香辛料 他:シナモン、ナツメグ、甘草 |
印象 | 第一アロマが強い、木樽からのニュアンス |
味わいのおすすめ選択肢
項目 | 選択肢 |
アタック | やや強い |
甘み | まろやかな |
酸味 | 滑らかな |
タンニン | 力強い |
バランス | 骨格のしっかりした、力強い |
アルコール | やや強め |
余韻 | やや長い |
総合評価のおすすめ選択肢
項目 | 選択肢 |
評価 | 成熟度が高く豊か |
適正温度 | 17~20℃ |
グラス | 中庸 |
デカンタージュ | 必要なし |
収穫年 | 3年前 |
ブラインドで品種を当てるには、テイスティングで答えにたどり着くための型を持っておくことが重要です。
今回の解説を読みながら、様々な産地のカベルネ・ソーヴィニヨンを飲んでみてくださいね。
コメント