PFASはワインに入っている?最新データを解説

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最近何かと話題に上がるPFAS。

「そもそもPFASって何?」という人や、「最近PFAS対策で浄水器を買った!」という人もいることと思います。

そこで、当ブログらしく「PFASはワインに含まれているのか?」について、最新論文を調べました。

ここでは調査の内容をもとに、ワインにPFASは入っているのか?を解説します。

先に結論ですが、ワイン中のPFASは非常に安全なレベルと言えます。

前半では、「そもそもPFASとは何か?」についても簡単に解説しています。

PFASについてすでにご存じの方は、こちらから後半をご覧ください。

ソムリエのみなさんも、ワイン中のPFASについて理解することで、お客様から聞かれてもしっかり回答することができるようになりますよ!

コットン
コットン

PFASについて正しい知識を持っている人はまだ少ないよ。

しっかり勉強して、正しく向き合おう!

そもそもPFASとは?

詳細は後述しますが、PFASとは有機フッ素化合物と呼ばれるものです。

加工性・撥水性に優れ、調理器具の表面に塗布して焦げ防止したり、食品の包装紙に使ったり、消火剤に使われたりしています。

非常に幅広く使われていたものの、今世紀に入ってから徐々に「これ、本当に大丈夫か?」という疑念が出始め、最近EUで規制されたことをきっかけに一気に話題になりました。

ここではPFASについて要点を絞って解説します。

有機フッ素化合物の総称

ニュースなどで「PFASが○○市で基準以上に発見された」のようなコメントがありますが、あれは間違いです。

なぜならPFASとは有機フッ素化合物の総称であり、ここには1万種類以上の化合物が含まれるから。

これだけの種類があるため、全てのPFASを測定しきることなどできませんし、そもそも現代の技術で測定法が確立されていないPFASも多いです。

よって、ニュースのコメントを訂正すると「PFASのうちの1成分が基準以上に発見されました」となります。

毒性が確認されていないPFAS もある

前述したようにPFASはたくさんの化合物の総称であるため、毒性が確認できているPFASもあれば、そうでないPFASもあります。

日本で「このPFASには毒性がある、規制しよう」と言われているのは2種類だけ。

PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)です。

そのほかのPFASについては「毒性があるかもしれないけど実験で確認してないしなぁ・・・」のような状況。

海外に目を向けると、「疑わしきは罰する!」のような形で、根拠に乏しいPFASを規制している例もあります。

日本の管理基準

日本と各国の規制動向をまとめてくれているサイトがありましたので、詳細はこちらをご覧ください。

日本では、水質の暫定目標としてPFASのうちPFOSとPFOAの合算値で50pptが基準となっています。

pptとは「パーセントパートリリオン(1超分の1パーセント)」のことで、50pptをなじみのある単位に換算すると0.000000005%のこと。

この濃度であれば水を毎日がぶがぶ飲んでも問題ないとされ、暫定的な目標値に設定されています。

現時点でも目標値が妥当なのかは専門家で議論されており、今後の基準値改正も考えられます。

最も怖いのはPFASの分解されにくさと拡散性

PFASの最も怖いところは、単純な毒性ではなく分解されにくさと拡散性にあります。

例えばワイン中のエタノールは毒性や発がん性が実証されていますが、6~10時間程度で体内で分解されて酢酸になり、無害になります。

一方でPFASは分解することができず、そのままの形で存在するため、徐々に環境中で濃縮されてしまうのです。

また、水道水などに乗って広く拡散されるため、どこにでも存在してしまう怖さもあります。

ワインにPFAS は入っているのか?

さて、いよいよ本題です。

ワイン中にPFASが入っているのかを論文ベースで調査した結果をまとめます。

特に有害であることがわかっているPFOSやPFOAの検出事例があるのかについて注目しました。

ワイン中でPFAS検出された事例はあるが、PFBAのみ

Per- and polyfluoroalkyl substances in food and beverages: determination by LC-HRMS and occurrence in products from the Belgian market」という文献で店頭に販売されているワイン3種を分析した事例がありました。

これによると、ワイン中でPFASが発見された事例はありますが、毒性が確認されていないPFBA(ペルフルオロブタン酸)という物質でした。

先ほどの文献によると、ワイン中でPFBAが0.062~0.127ppb検出されたという報告がされています。

ppbとはパーセントパービリオン(10億分の1パーセント)のことで、なじみのある単位で表現すると、0.0000000062~0.0000000127%です。

コットン
コットン

オリンピックの競技用プール6500個をワインで満たして全部飲んだら、ようやく1gのPFBAが体内に入る計算だよ。

とてつもなく少ないね!

PFBAは人体へ何かしらの影響がある可能性もあると言われていますが、現時点ではまだ根拠に乏しく、ほとんどの国で規制されているものではありません。

PFOS、PFOA 以外の PFAS に係る国際動向」という文献によれば、ドイツとデンマークのみ規制が制定されており、ドイツでは10ppb、デンマークでは0.1ppb以下が目標とされています。

現状のデータから考えると、きわめて厳しいデンマークの基準相当の検出事例しかないため、ワインのPFBA懸念は無視できると考えるのが妥当と思われます。

なお、有害であることがわかっているPFOSやPFOAについては確認されていません。

ワインにPFOSやPFOAが入っていない理由

これは私の私見です。(まだワインに関する文献が少ないためご容赦ください。)

PFASは人間の活動によって生まれ、特に水を媒介にして拡散します。

コットン
コットン

体内にPFASをもつ動物が動くことでも拡散するけど、影響度は少ないはず。

よって、人間が生活用水として活用するエリアの水はPFASが多く含まれていると考えることができます。

一方、日本に輸入されるようなワイン(特にヨーロッパのワイン)は、古くからのルールにより、灌漑(農業用水を畑にまくこと)が禁止されていることが多いです。

ワイン中に含まれる水分は基本的に全てブドウ由来なので、ブドウ畑に農業用水が巻かれていなければ、ブドウの木がPFASを吸い込む可能性は極めて低くなります。

結論、ワインにはPFASが含まれにくいと考えることができます。

※水以外の要素でブドウ畑が汚染されたり、醸造設備の洗浄水が汚染されている可能性もあるので、絶対に含まれないわけではありません。

それでもPFASが含まれていなさそうなワインを飲みたいなら

現時点でワインの危険性が少ないことは前述の通りです。

しかし、それでも「PFASが含まれている可能性があるものは避けたい!」という方はいると思います。

そういった方々に向け、PFASを避けるためのワイン選びをご紹介します。

ちなみにこちらも私見です・・・。(現状、実証データが無いため理論的に考察しています。)

前述のように、PFASは人間の活動によって拡散していきます。

そのため、やはり灌漑が禁止されている地域のワインであればPFAS混入のリスクは少ないと言えるでしょう。

よって、灌漑に対するルールが比較的緩い新世界(アメリカ、チリなど)よりも、厳格なルールがある旧世界(フランス、イタリアなど)の方がPFASの影響は少ないと考えられます。

一方、「自然派ワインや無添加ワインであれば安全なのでは?」と考える方もいるかと思います。

しかし、オーガニック肥料であってもPFASの混入可能性があることや、有機認証に水質が問われていないことなどを考えると、自然派ワインかどうかは判断軸にならないと思われます。

ルールが厳格な旧世界で、一定の分析設備を持っていそうな大手ワイナリーというのが、現実的にPFASを避ける最善策であるように思います。

最後に PFASについて個人的な意見

先日のニュースで、PFASの分析結果を公表していなかった自治体や、PFASが基準値を超えていた自治体に対し、怒号が飛んでいる様子が映し出されていました。

お怒りはもっともだと思います。

しかし視点をずらし、そもそもPFASを出しているのは誰でしょうか?

行政でしょうか?それとも企業?消費者でしょうか?

答えは全員です。

PFASは社会活動で出ることもあれば、みなさんの日常生活からも出てきます。

あなたは包装紙でくるまれているハンバーガーを食べたことがありますか?その包装紙からもPFASは出てきます。

「そんな包装紙を使う企業が悪い!」という意見もあります。正論だと思います。

一方、同じ包装紙でも、きちんとしたごみ処理を行った場合とポイ捨てした場合では、環境中に排出されるPFAS量は大きく異なります。

フッ素加工されたフライパンを柔らかいスポンジで洗った時と、たわしで洗った時でも差が出ます。

つまり、知識のある人はPFAS排出量が少なくできるけれど、知識のない人は知らず知らずのうちにPFASを多く輩出している可能性があるのです。

PFASのような新たな物質に対し、無知を振りかざして誰かのせいにすることは簡単です。でもそれでは何も変わりません。

全員が「自分のせいでもあるな」と真摯に受け止めて勉強することで、少しでも早く、PFASを低減できるのではないかと思います。

そして、今後もどんどん新しい毒性物質が発見されます。分析技術の向上によって確実に発見されます。それらに対しても同じ姿勢で臨むことが重要だと思います。

コットン
コットン

人類みんなで学んで、改善していこう!

コットン
コットン

勉強したあとはワイン飲もう!

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