ソムリエ・ワインエキスパート資格の二次試験はブラインドテイスティング。
基本的には「きちんとテイスティングコメントを書く能力があるか?」を確認する試験なので、品種・生産地は正解しなくても受かります。
しかし近年は受験者のレベルも上がり、できれば正解しておきたいのも事実。
そこで、どうやってブラインドで品種と産地を当てるか、具体的なメソッドを解説します。
テイスティングの行程ごとに、ワインエキスパートの思考方法を解説していくよ!
今回は「甲州」について解説します。
白ワインは赤ワインに比べて難易度が高め。でも丁寧にやれば品種は正解できるよ!
味覚・嗅覚は人によって差があるため、今回の解説が全員に当てはまるわけではありませんが、考える道筋として参考にしてください。
↓品種別ブラインドテイスティング解説はこちら
甲州の基本情報
名称 | 甲州 |
外観 | 藤色がかった無色に近いレモンイエロー |
香り | カボスなどの和柑橘 |
味わい | キレのある爽やかな酸味とうまみを伴う飲み口 |
見分けるポイント | 外観・香り・低いアルコール度数 |
日本を代表するブドウ品種である甲州。
シュールリーしてうまみを持たせたタイプ、果実味を活かしたタイプ、木樽を使うタイプなど様々ありますが、試験に出るのはシュールリーしたタイプ。
このタイプの甲州ワインは見分けるポイントが多く、当てる難易度は低め。
落ち着いて取り組めば着実に当てられるワインのため、本記事を読んでしっかりイメージトレーニングしてみてください。
甲州をブラインドで当てる方法
甲州は、数回練習しておけば比較的簡単に当てられる品種のうちのひとつです。
外観で気づき、香り自信をつけ、アルコール度数で判断するイメージです。
それぞれの行程を順番に見ていきましょう。
外観(色調)を確認する
まずは下記の3タイプを軸に、外観がどれに該当するかをチェックしていきます。
試験に出るほとんどの白ワインは①に該当しますが、甲州は③となります。
慣れるまでは①と見分けがつきにくいですが、しっかりグラスを傾けて確認すると、液の中央の色が非常に淡いこと、エッジがやや藤色もしくはピンク色っぽくなっていることがわかります。
この時点で甲州を強く疑うことができます。
つまり、甲州については外観だけでかなり選択肢を絞り込めるということ!
さらに少しスワリングしてみると、粘性が低くさらさらしていることもわかります。
ただしこの時点では、他の品種も一応選択肢に残しておきます。
この時点の候補:甲州(本命)、ミュスカデ、シャルドネ、アリゴテ(参考程度)
香りで自信を強める
外観で甲州と考えられる場合でも、念のため「他の品種の可能性はないか?」と考えましょう。
甲州という先入観があると、香りや味わいも甲州っぽく感じてしまうからです。
テイスティングにおいて一番の敵は「この品種だ!」という思い込みだよ!
そのうえで、入念に香りを確認します。
甲州の場合、柑橘ではあるもののレモンやグレープフルーツとはやや異なる香りを持っています。
イメージがつかない方は、スーパーでレモンとカボスを買ってきて嗅ぎ比べてみてください。
似ているもののやや異なるにおいに感じると思います。
さらに、シュール・リータイプの甲州はかなりニュートラルなことが多く、鼻を近づけないと香りがほとんど取れないことも特徴です。
ただ、香りの差は弱いため、相当訓練をしないと自信を持って和柑橘を判別できないため、この時点でも他の品種を候補に残しておきます。
この時点の候補:甲州(本命)、ミュスカデ、シャルドネ、アリゴテ(参考程度)
アルコール度数で絞る
ここまで残っている品種の中で、シャルドネとアリゴテを判別する方法があります。
それはアルコール度数。
試験に出る甲州やミュスカデは11.5%程度ですが、シャルドネは12.5%~14.5%の間、アリゴテは12.5%程度。
アルコール度数は訓練すれば0.5%刻みくらいでわかるようになるため、度数の差から、シャルドネやアリゴテは外せます。
候補となる品種:甲州、ミュスカデ
最後にもう一度外観
そして残った甲州とミュスカデの差ですが、もう一度外観を確認して判断します。
試験に出る甲州は無色に近いものが出ますが、ミュスカデは色が非常に淡いもの~色が比較的濃いものの間で、かなり差があるからです。
そこで外観を確認し、液面のエッジが藤色がかっているか?を再確認します。
藤色を感じた場合は甲州一択、わからなかった場合は甲州の可能性が6割程度といったところ。
最終的に絞り込めなかった場合は、自分の間隔で品種を決めてしまって問題ありません。
ここまでのフローでテイスティング自体は正確にできているため、テイスティングコメントはほぼ満点が期待でき、他受験生に後れを取ることはないからです。
甲州の特徴がわかるワイン
このワインはシュールリーの風味や和柑橘の香りが取りやすく、試験に出るワインと近い特徴を持っています。
シュールリーのうまみは、ワインを飲み込んだあとに舌の中腹~付け根あたりに意識を集中するとわかりやすいです。
人にもよりますが、飲んだ後に数秒して苦みに近い感覚が来ると思います。
ブラインドテイスティングを鍛える方法
ブラインドテイスティングを鍛える方法は、なんといってもブラインドテイスティングをたくさん行うこと。
ブラインドで飲むことにより、少しでもワインから情報を得ようとするクセをつけましょう。
たくさんの種類をブラインドで練習するには、ヴノテラスのブラインドセットが最もコスパが良かったです。
少し値は張りますが、回答用紙や講師の模範解答も届き、本番さながらのテイスティングをすることができます。
ただしブラインド小瓶セットは二次試験が近くならないと販売されません。
それまでの間は下記のような品種別ワインのハーフボトルセットをお勧めします。
甲州の模範回答
最後に、甲州と思われるワインが出題された場合に選ぶべき、オススメの回答をご紹介します。
甲州は比較的分かりやすいですが、試験に受かるという意味では「品種を外しても70点は取れる」ような選択肢を選ぶことが大切です。
下記の模範解答なら品種を外しても合格点が狙えるため、しっかり覚えておきましょう。
外観のおすすめ選択肢
項目 | 表現 |
清澄度 | 澄んだ |
輝き | 輝きのある |
色調 | グリーンがかったレモンイエロー |
濃淡 | 淡い |
粘性 | やや軽い |
印象 | 若々しい、軽快 |
香りのおすすめ選択肢
項目 | 選択肢 |
第一印象 | 控えめ、フレッシュな |
特徴 | 果実:柑橘、青りんご、りんご 花:スイカズラ、アカシア 香辛料 他:石灰、貝殻、海の香り |
印象 | 若々しい、ニュートラル |
味わいのおすすめ選択肢
項目 | 選択肢 |
アタック | やや軽い |
甘み | ドライ |
酸味 | 爽やかな |
苦み | 穏やかな |
バランス | コンパクトな |
アルコール | 中程度 |
余韻 | やや短い |
総合評価のおすすめ選択肢
項目 | 選択肢 |
評価 | シンプル、フレッシュ感を楽しむ |
適正温度 | 8~10℃ |
グラス | 中庸 |
収穫年 | 1年前 |
ブラインドで品種を当てるには、テイスティングで答えにたどり着くための型を持っておくことが重要です。
今回の解説を読みながら、甲州を飲んでみてくださいね。
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