ワインエキスパート試験の2次試験はテイスティングです。
合格率は75%程度と高いですが、一次試験を突破してきた受験生たちが相手となるため、小さなミスが命取りになります。
さらにほとんどの受験生がスクールに通っているため、ライバルのレベルは高いです。
独学に強いこだわりがないのであれば、金銭・効率・人脈・肝臓面でワインスクールがおすすめ。
しかしそれでも「独学で自分のペースで受けてみたい」「スクールのスケジュールに乗らず、気楽に受けたい」という人は多いと思います。(私もそうでした)
今回は二次試験に独学一発合格した私が、独学で2次試験に合格する具体的な方法を解説します。
トレーニング法もかなり細かく紹介するので、すぐに実践可能です!
テイスティング練習の準備をする
テイスティング能力向上のため、重要なのは比較テイスティングとブラインドテイスティング。
まずはこれらの訓練を行うために、必要なものを準備しましょう。
小瓶分割法の準備をする
これらを独学で練習する際、おすすめなのは小瓶分割法です。
小瓶分割法のメリット
小瓶分割法では長期間保管ができるため、ワインをグラス一杯ずつ飲むことができます。
これにより、独学でも次の練習法が可能になります。
後述しますが、比較テイスティングをするとテイスティング能力は向上しやすくなります。
小瓶分割法ははとても重要な役割を担ってくれると言えるでしょう。
おすすめの小瓶セットを紹介
最もおすすめなのはヴィノテラスワインスクールが販売しているブラインドテイスティングセット。
これを購入し、飲み終わったあとの瓶を洗って取っておきます。
ブラインドテイスティングの練習にもなるし、回答用紙と模範解答もプレゼントしてもらえるのでおすすめです。
また、次のようなハーバリウム用の小瓶をしっかり洗って使うのも良いでしょう。
面倒であればコラヴァンでも良い
小瓶分割法の方がおすすめですが、瓶がかさばったり準備が面倒です。
この場合は、コラヴァンを活用するのもアリです。
コラヴァンとは、専用のニードルと不活性ガスを活用し、ワインを長期保管しつつグラス単位で楽しむことができるようにしたもの。
以下のデメリットがあるので小瓶分割法の方がおすすめですが、最初はコラヴァンでやってみるのもおすすめです。
4~6脚のグラスセットを準備する
テイスティングに使用するワイングラスは、国際規格で形状が定められています。
やはりベストは国際規格のグラスセットですが、少々高価ですし、日常でワインを楽しむためには少し味気ないです。
そのため、似たようなグラスであれば他のものでも構いません。(容量が400mL以上のものは大きすぎて香り方が変わるため避けましょう。)
試験後も使用することを前提に、納得できるものを用意しましょう。
ただし比較テイスティングの際に、ワインごとでグラスの大きさが違うのはNG!
必ず同じ大きさのものを4脚以上揃えましょう。
試験は4種のテイスティングなので、最低でも4脚は確保しておき、リハーサルができるようにしておきます。
3~6月 ラベルを見ながらテイスティング練習する
3~6月、普通は一次試験の勉強に集中している時期ですが、独学初心者の場合は一次試験後から練習を始めたらスクール生に負けます。
この時期から1~2回/週のペースでテイスティング練習を始めましょう。
毎日飲んじゃダメ!
まずは試験頻出品種のテイスティングを行い、基礎を固めます。
最低限練習したい品種は次の通り。
白ワイン:シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、リースリング、甲州、ミュスカデ、ゲヴェルツトラミネール、トロンテス
赤ワイン:ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー(シラーズ)、サンジョベーゼ、ネッビオーロ、テンプラニーリョ、メルロー
※太字は特に重要です。
ただしもちろん優先すべきは一次試験合格なので、もし進度に不安があるなら迷わず一次試験の勉強を優先しましょう。
この時期にオススメの練習方法を解説していくよ!
まずはアルコール度数を誤差0.5%で当てられるようにする
意外かもしれませんが、テイスティングで最も重要なのは、アルコール度数を正確にとらえること。
いきなり香りの練習をするのはおすすめしない!混乱するよ!
過去の出題ワインの傾向を加味すると、これだけでもかなり産地を絞り込めます。
例えば11.5%の白ワインが出てきたら、それだけで甲州かミュスカデに絞れるよ!
ワインを飲んだら0.5%刻みで度数を予想し、誤差0.5%以内で当てられるようになるまでトレーニングしましょう。
例えば13%のワインを飲んだとき、「12~12.5%かな?」くらいのズレならOKです。
オープン比較テイスティングで品種・製法・産地の違いを知る
初心者がいきなりワインを単独で飲んでも、何に着目すれば良いかわかりません。
例えば「樽の香りを覚えよう」と思って、樽のかかったシャルドネを買ってきたとします。
この時、果たして何が樽の香りなのかを感じ分けられるでしょうか?おそらく無理ですよね。
樽のかかったシャルドネの場合はMLFされていることが多く、ロースト、バニラ、ヨーグルト、…の香りがあり、さらに果実の熟度が高ければ果実由来の甘い香りもあります。
ここで、隣に「同じ地方で作られたステンレスタンクのシャルドネ」があったらどうでしょうか?
両者をかぎ分け、樽の香りをピックアップすることができますね。
このような背景から、基本は比較テイスティングで鍛えていきましょう。
次の順で比較テイスティングしていくのがおすすめです。
品種の比較テイスティング
まずはシャルドネ⇔ソーヴィニヨン・ブランのように、重要品種の比較テイスティングをしていきます
白ワインの場合できるだけ樽を使っていないものから選び、シンプルに品種の違いを比べられるようにして訓練しましょう。
例えばシャルドネ、リースリング、ソーヴィニヨンブランを比較する場合は「アロマティックとニュートラルの差は?」「酸の広がり方の差は?」など、飲み比べて自分なりに特徴を把握します。
味や香りは人によって受け取り方が違うので、自分の基準を見つけよう!
重要なのは、香りだけに頼らないこと。香り3割、味7割くらいの意識を持ちましょう。
また例えば外観なら、甲州はグリブドウなので藤色がかっている淡色であることが多くヒントになります。
外観・香り・味わいを順番に比較し、自分なりの判断軸を作りましょう。
産地の比較テイスティング
次は同じブドウ品種で、産地を変えて比較してみましょう。
一般に、冷涼な産地は果実の甘酸っぱいフレッシュな香りで酸味が豊か、温暖な産地はジャムっぽい甘味のある香りになりアルコールが豊かになります。
アルコール度数を当てる練習はすでにしているので、産地の目星をつけられるようにしましょう。
例えばフランスのピノ・ノワールとカリフォルニアのピノ・ノワールのような両極端なものを飲んで練習しておき、その後でニュージーランドのピノ・ノワールを比較してみるとわかりやすいです。
木樽の比較テイスティング
赤ワインはほとんどのもので木樽を使っていますが、白ワインはステンレスタンクのものも多いです。
そこで、木樽の香りを正確に取れるようにしておくと、品種が絞り込めることも多いです。
例えばシャブリはステンレスタンク熟成と木樽熟成がありますが、一般に木樽を使うのは一級畑以上のワインなので試験には出ません。
つまり、木樽の香りがあった時点でシャブリの可能性は無くなります。
品種特徴香(ペトロール香など)よりもはるかにわかりやすいので、こちらを優先してしっかりと練習しておきましょう。
「ぺトロール」、「ライチ」・・・品種特徴香は当たると気持ちいけど、正解しても他の香りと同じ1点しか入らないよ。
テイスティングの基本は知識!一次試験の勉強は最優先
テイスティング練習は、あくまで「ワインが発している情報を細部まで正確に拾い集める練習」です。
情報があっても、品種特徴が頭に入っていなければ判断できませんよね。
また産地や製法についても、ブドウの生育・産地やワインの製法が味にどう影響するのか?などがわかっていないと当てられません。
さらに、勉強していなければ「これはフランス ブルゴーニュのソーヴィニヨンブランです。」のような回答をしてしまうかもしれません。
ブルゴーニュ地方はシャルドネかアリゴテですね。
やはり、テイスティングの土台になるのは何よりも知識なのです。
一次試験の勉強は、そのまま二次試験の勉強に繋がることを理解しておきましょう。
「二次試験対策だ」と言って飲んでばかりいたらダメ!
7~10月 試験対策の練習を繰り返す
ここまで一次試験の勉強してきた人なら、基礎的な知識は身に付いているはず。
ここからはブラインドテイスティングに挑戦していきましょう。
試験対策のブラインドテイスティング方法
ここでも小瓶が活躍します。
小瓶を大量に用意し、ワインを入れたあとにテープで底面にアルコール度数、ブドウ品種、産地、収穫年を書いておきます。
これをワインボトル5本分ほど作って冷蔵庫に入れ、シャッフルしておきます。
あとはこれらを2~4本ずつ取り出し、ブラインドで比較テイスティングして回答⇒正解確認していきます。
このときに重要なのは次の点。
順番に解説していきます。
品種当てゲームをしない
ブラインドテイスティングでやりがちなのが「このワインはリースリング、フランス、2021!」のように、品種・産地・収穫年のみを考えてしまうこと。
これを繰り返しても、テイスティング能力は身に付きません。
クイズみたいで面白いけど、練習にはならない!
重要なのは、テイスティングフォームにのっとり外観⇒香り⇒味わい⇒結論(品種・産地・収穫年)と進めていくこと。
テイスティングはワインが発する情報を拾い集める作業です。
次の認識を持っておいてください。
テイスティング能力が高い=品種や産地を当てられる
テイスティング能力が高い=ワインが発する情報を細部まで正確に抽出できる
ブラインドテイスティングについては、ヴィノテラスワインスクールの佐々木講師がyoutubeで解説もしてくれていますので、こちらも是非ご覧ください。
外観で先入観を持たない
たとえば「色が淡いからピノ・ノワールかな」と先入観をもつ人は多いですが、ガメイはもちろんネッビオーロやカベルネ・フラン、日本のメルローも淡いです。
もしも「ピノ・ノワールっぽい」と考えていたら、不思議なことに香りも味わいもピノ・ノワールのように感じられます。
外観はこう、香りはこう、味わいはこう、と順番に情報を拾い集めましょう。
香りだけで判断しない
これもありがちですが、初学者ほど香りに頼ったテイスティングをやりがちです。
漫画「神の雫」のイメージが強いのかも・・・。
たしかに香りはとても多くの情報を発していますが、それを正確にキャッチするには長年にわたるトレーニングが必要です。
さらに、テロワールや果実の成熟度合い、製法によって香りはいかようにでも変わります。
香り3割、味わい7割くらいの比率で考えておきましょう。
テイスティングの模範解答を知っておく
「この品種の場合は、こういう回答がスタンダード」のように、基本の型となる模範解答を知っておくことは重要です。
当サイトでは、ブラインドテイスティングで品種を見極める方法と、その品種の模範解答をまとめています。
まずはこれをご覧いただき、選択肢を見なくても模範解答が出てくるレベルに仕上げておきましょう。
ほとんどの品種で正解となる選択肢があることにも気が付けば、試験でとれる点数はかなり安定します。
試験に近い解答用紙に記入しながらテイスティングする
この段階では、実際の試験を想定して解答用紙を埋める訓練をしておきましょう。
さきほど紹介したヴィノテラスワインスクールのブラインドセットを購入すると、回答シートがついてくるので大量にコピーします。
講師の模範解答とおすすめ選択肢もついてくるので不安がなくなるよ!
そのほか、ワイン受験.comさんで解答用紙をダウンロードすることもできます。
5~6分で解答を終了することを目標にして練習しましょう。
利き手と反対の手でグラスを持ってテイスティングする練習を行う
二次試験はかなり時間が短いわりに解答項目が多く、回答用紙に記入する時間を削減することが重要となります。
そこで、利き手と反対の手でテイスティングするようにしておきましょう。
こうすることで持ち換えずにテイスティングと回答をすることができるようになり、大幅に時間を削減できます。
これができるかどうかで、本番のゆとりがかなり変わります。
本番を想定して不安な事項を調べておく
二次試験は本当に時間が足りなくなるため、事前に調べられる限りの情報を集めておきましょう。
当サイトでも二次試験の不安事項解消記事を作成していますので、こちらをご覧ください。
その他、不安な点があればお気軽にコメント欄や問い合わせフォームからご連絡ください。
本当に何でも気軽に聞いてね!
もちろん無料で答えるよ!
テイスティング練習にオススメなワインセット
最後に、テイスティング練習にオススメなワインセットをいくつかご紹介します。
ヴィノテラスワインスクール ブラインドセット・品種別セット
試験対策に最もおすすめなのがこの小分けワインセット。
少し値は張りますが、回答用紙や講師の模範解答も届き、本番さながらのテイスティングをすることができます。
ただしブラインド小瓶セットは7月下旬ごろからしか販売されません。
それ以外の時期は試験対策フルボトルセットが購入可能ですので、そちらをおすすめします。
基本は独学、たまにヴィノテラスワインスクールという組み合わせが強いよ!
ヒグチワイン ハーフボトルセット
スクールではありませんが、おすすめなのがヒグチワインさんのハーフボトルセット。
試験に出やすい品種・価格帯のものをハーフボトルでセットにしてくれており、費用や肝臓への負担の面で大変助かります。
私はヒグチワインさんで計40本以上のハーフボトルを購入して練習しました。
ただしスクールではないため、テイスティングコメントの模範解答は頼りになりません・・・。
余談ですが、ヒグチワインさんの使用している段ボールはTCAのようなにおいがしており、ブショネを覚えるために使えたりします・・・。
もちろん中身のワインに香りが移ったりはしてないから安心してね!
玉川屋 ソムリエ試験対策ワインセット
こちらもハーフサイズのボトルセット。
こちらはヒグチワインさんよりも試験に出ない品種が多く混じっている印象なので、優先して購入しなくても良いでしょう。
ヒグチワインのセットを大体試してしまった場合、参考としてこちらも検討すると良いでしょう。
いかがでしたか?
合格率は高いものの、受験者のレベルが高いためミスをすると落ちてしまうのが二次試験。
しっかりトレーニングして、一発合格を目指してくださいね。
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