「ワインに興味が出てお店に見に行ってみたけど、値札の隣の説明文が難しすぎて買えなかった・・・」という経験はありませんか?
例えば「ラズベリーや黒系果実のアロマに微かなスパイスのニュアンス。豊かな果実みとほどよい酸味のバランス。」のようなイメージです。
こんなコメント書かれても、味わいがイメージできないですよね。
実はこれは、ワインのテイスティングコメントと呼ばれ、「このワインの特徴はこうですよ」と示すためのソムリエたちの共通言語なんです。
ワインのテイスティングコメントを知っていると、お店の人が伝えようとしていることがわかり、選びやすくなります。
今回はよくわからないワインの表現について解説したいと思います。
そもそもテイスティングとは何をするの?
ワインと聞くと、テイスティングするイメージがありませんか?
そしてテイスティングしたあとに表現をするように求められたとしたら、どう答えるでしょうか。
このワインは疾走感がありつつも深みを感じる。まるでシューベルトの魔王のようだ。。。
このようなコメントをするのかな?と思っている方もいるのではないでしょうか。(有名なワイン漫画の「神の雫」ではこんな感じの表現が頻出しますので、その影響もありそうです。
さすがにここまではいかなくとも、「爽やかな朝みたいなワインだね」とか言ってしまいそうになる方もいるのではないでしょうか。また、「飲みやすい」だけ言ってしまう人は多いように思います。
でもこの場合「飲みやすい」って、誰にとって飲みやすいのでしょうか?「爽やかな朝」も人によって印象が違いますよね。
酸味が苦手な人もいれば、渋みが苦手な人もいて、誰にとっても飲みやすいワインというのは無いように思います。
そこで、ワインの特徴を客観的に示す必要が出てきます。
テイスティングコメントの考えかた
ワインの表現を端的に言ってしまえば、ワインの様々な要素を、評価するための共通言語に置き換える作業ということができます。
人間はだれ一人として共通の感覚ではないため、個人の感想ではなく、他人も理解ができるようにしなければなりません。
香りについてコメントする場合
香りであれば、「このワインは爽やかな香りがする。」ではなく、「このワインは柑橘の香りで、青リンゴのニュアンスも含む」のように変換します。
このように「こういう香り(細かく言うとワイン中に含まれる色々な化学物質のにおい)がしたら、こういう表現をしましょう。」というのをソムリエ協会が設定し、これをもとにソムリエたちは香りを感じとり、対応する言葉に置き換えています。
味わいについてコメントする場合
酸味について見てみましょう。
酸味が多いと感じたら「豊か」もしくは「爽やか」と表現します。反対に弱いと感じたら「穏やか」と表現します。「酸っぱい」のようなネガティブな言葉は使いません。
あくまでもそのワインに向き合って、ポジティブな言葉で表現してあげることが目的です。
このような考え方をベースに、ワインを表現していきます。
実際のテイスティングコメントをもとに解説
それでは実際のテイスティングコメントを見てみましょう。
以下はとある白ワインのコメントです。
ワインについて勉強している方は、どんなワインか想像しながら見てみてくださいね。
「透明感のある淡いイエロー。やや緑を含んだ色合いがフレッシュさを感じさせる。
青い草原を駆け抜けるような青く爽やかなアロマの中にスパイシーでいてハーバルなニュアンスも感じられる。
香りとは裏腹にしっかりとした酸味、採れたてのパッションフルーツが口の中で弾けるようなインパクトがある。
余韻の長さからも高いポテンシャルが伺える。」
最初は外観についてコメントを見ていく
清澄度合いについては、ほとんどが透明なものになります。一部濁りを生じる製法もあります。
年月の経っていない白ワインの場合、果実が成熟しているほど色が濃くなり、「イエロー」と表現します。
一方、果実の成熟度が低い場合は「レモンイエロー」となります。
また同じワインでも、何年も寝かせておくと色が濃くなってきますので、若い場合は補助的に「グリーンがかった」、年月が経っている場合は「黄金色がかった」とつけます。
つまり2年前くらいに製造されたワインで、果実の成熟度が高くない場合「グリーンがかったレモンイエロー」となります。
店頭で売られている白ワインは、半分以上はグリーンがかったレモンイエローなものだと思います。
次に香りのコメントを見ていく
細かい話ですが、ワインの香りをクンクンする行為は、香りを「嗅ぐ」ではなく香りを「取る」と言います。
知っていると通っぽいので、覚えておくと良いですよ。
最初にフルーツの香りを見る
例題とは前後しますが、香りはまずフルーツを考えます。
不思議なことにブドウからは他のフルーツのにおいもするのですが、ブドウの成熟度や生産地によって、ワインから漂う香りが変わります。
白ワインにおいて、冷涼産地で成熟度が低い場合はレモンなどの柑橘のにおいが強く、温暖産地で成熟度が高い場合にはパッションフルーツのようなにおいがしてきます。
そのため、コメントを読めばどのような気温で育ったのかがだいたいわかるのです。
気候とフルーツ関係をまとめると下図のようになります。
でもこう見てみると、例題のコメントには冷涼と温暖の両方の要素がありますね。
これは、この品種に特徴的な香りとして、パッションフルーツがあるからです。
産地だけではなく品種も考える必要があるので、ちょっとややこしいですね。
果実の次に花の香りを見る
白ワインでは「ちょっと花のにおいがするかな?」というくらいであればすいかずらのように小さな花の香りと表現し、しっかり香る場合であればアカシアと表現します。
これも果実の成熟と関係していて、温暖な産地であればアカシアのようにしっかり花のにおいがします。
今回の場合は花のにおいは書いてなくて、この産地のこの品種特有である「青い草原」や「ハーバル(ハーブのようなにおいがする)」と書いてありますね。
このような香りはグリーンノートと呼ばれ、一部の品種で特徴的に香ります。
ワインに詳しい方であれば、この時点で例題の品種と産地はわかったのではないでしょうか。
(ソムリエを目指す人であれば、ここまでのコメントでわかっていなければいけません)
ちなみに他にはスパイスのような香りもたくさん載っているのですが、このあたりは香りを認識するのが難しく、品種ごとの特徴的な香りというイメージで書いている部分になります。
よく「コリアンダー」とか書いてありますが、無視して問題ありません。
その他に気にしておくべき香り① 乳製品
気にしていただきたいのは「ヨーグルト」や「乳製品」と書いてある場合です。
これはマロラクティック発酵という手法により、本物のヨーグルトと同じく乳酸菌の活躍によって乳酸ができているワインです。
ビギナーの方はワインの酸味が苦手という方も多いため、この香りがするものの方を選ぶと酸味が少し穏やかになっているので飲みやすいかもしれません。
その他に気にしておくべき香り② 樽香
ヴァニラやトーストと書いている場合がここに該当します。
この場合はワインの熟成過程で木の樽を使っており、ワインからもその香りがしますよ。という意味です。
一般に木の樽の香りがしっかりする場合、ワインに複雑みが出てきて、生の魚介と合わせると魚介の臭みを引き立ててしまいます。
このような香りのコメントがあるワインは、魚介であれば火を通したものと合わせるのが王道です。
また、鶏肉や豚肉との相性はこちらの方がよいでしょう。
味わいについて見ていく
味わいは主にアルコール度数によるアタックの強さと酸味のバランスを考えます。
まずアルコール度数は、温暖な産地の方が高くなり、アタックも強くなります。
舌の真ん中から付け根あたりに、フワッとアタックしてくるイメージです。
例題の場合、ここについては記載がありませんね。
次に酸味は、しっかりした、爽やかな などの記載があれば強く、穏やかなとあれば弱いという意味です。
直接的に強弱の表現はないので注意してください。
酸味はアルコール度数とは逆に、冷涼な方が強くなります。
そうするとこの例題では冷涼なのかな、と推測されます。
また、余韻は飲み込んだあと口のなかに漂う味や香りの事ですが、これはワインの「格」を示すと言われています。
余韻が長いとあれば、しっかり作られたワインと推察できます。
総合評価と正解発表
これまでのコメントを見ると、外観、香り、味わいで冷涼な雰囲気でした。
また、木の樽を使っている様子もないため、比較的シンプルなワインであると思われます。
こういうワインは魚介に合うイメージがつけられます。
逆に、温暖な雰囲気であったり木の樽のコメントなどがあれば複雑みが出てきますので、一般的には火の通っていない魚介とは合いにくくなってきます。
この場合は火を通した魚介や鶏肉、豚肉等と合わせるとうまくいく場合が多いです。
最後に、これまで例にしてきたワインの正解を発表します。
◆エステート・ソーヴィニョン・ブラン ミスティ・コーヴ 2021年 ニュージーランド
ニュージーランドで、ソーヴィニヨンブランという品種で作られた白ワインです。
ニュージーランドのソーヴィニヨンブランは非常に特徴的で、柑橘とパッションフルーツの香りをあわせ持っていたり、ハツラツとしたグリーンノートがあります。
作り手が違ってもこれらの特徴は共通していますので、合わせる料理も考えやすいです。
今回はテイスティングコメントを読む際に着目するポイントについて解説しましたが、すぐに理解できるようにはならないと思います。
なんとなく「こんな味かな?」と想像してから飲むことで、どんどん選ぶのが上手になりますよ!
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