ワイングラスって色々な形があるけど、具体的に何が違うの?
ワイングラスの形はワインの種類に応じて味わいを最大限引き出すように設計されています。
味わいと形は対応していると覚えましょう。
適当なコップで飲むと、高級なワインでも味わいを楽しみにくくなります。
なぜなら、ワイングラスの主な機能である次の2点が満たされていないから。
- グラス内に香りを溜め込み、一気に香るようにする。
- 口に入れたときに、ワインの味わいがベストになるように広がる
例えば繊細なワインなら香りをしっかり溜め込んでから口中にスッと入るようにすることでおいしく飲め、骨太なワインなら香りはほどほどに溜めてじんわりと口中に広がらせるとおいしくなります。
これらの関係を理解すると、家庭でワインを数倍おいしく飲めるようになりますよ。
また、グラスに求められる機能を知っておけば、家庭にグラスがない場合でもコップの形や注ぐ量をコントロールしておいしく飲めるようになります。
この記事でワインの味わいとグラスの形の関係を理解し、グラスがない場合でもおいしく飲めるようになりましょう!
ワイングラスの機能とは
冒頭でも触れましたが、ワイングラスにおける重要な機能は次の2点です。
- グラス内に香りを溜め込み、一気に香るようにする。
- 口に入れたときに、ワインの味わいがベストになるように広がる
順番に解説していきます。
香りを溜め込んで一気に香るようにする
ワインに限らず、香り成分は空気よりも重いです。
つまりグラスに注いだ場合、ワインの液面からグラス上端までの間に香りがたまることになります。
これがコップだった場合はどうでしょうか?
同じように香り成分が溜まるように思えますが、口の部分が大きいため、ちょっとした風などで香り成分がふわっと拡散してしまいます。
図にするとこんな感じです。
また、傾けた時にもワイングラスであれば香り成分が一点に集中しますが、コップであれば拡散してしまいます。
ワインを口に含むときの広がり具合をコントロールする
ワイングラスは、ワインが口に流れ込むときの広がりかたも計算しています。
図にするとこんな感じです。
容量が多いのに飲み口が狭いグラスであれば、グラスをしっかり倒さないと飲めません。
この場合、ワインはある程度勢いよく口中に流れるため、あまり舌の上で広がらずに飲めます。
一方、容量に対して飲み口が広いグラスであれば、少し傾けるだけでワインが飲めるため、ワインはゆっくり口中で広がります。
ゆっくり広がる方が体温によってワインの温度も上がるため、渋みのあるワインについては渋みがマイルドになり、よりおいしく飲むことができます。
一方、酸味が味わいの肝であるワインは、温度があげると酸味がぼやけてしまい、おいしく感じにくくなってしまうため、舌の上で広げない方が良いのです。
ちなみに「舌の場所ごとに感じられる味わいが違うため、ワインの広がりかたが変われば味わいも変わる。」という記載をネットでよく見かけますが、この論理は1990年ごろに否定されているようです。
今の科学では「色々な味わいを感じる器官が舌のあちこちに均一に分散している」ということがわかっているため、味わいの違いはワインの広がりかたと温度と考えるのが妥当です。
ワイングラスの各部分の名前と役割について
まずはワイングラスの大まかな形を見ていきましょう。
次の図をご覧ください。
ワイングラスは次のような名前になっていて、このうち味わいに影響するのはボウル、リム、ステムです。
ワイングラスの持ち方については別記事で参考にしていますので、興味があれば読んでみてくださいね。
ボウル
ワインを注ぐ、グラスのメインとなる部分。
ワインは一杯あたり50~100mLくらい注ぎますが、ボウルは300ml以上のものが多いです。
一般的には注ぐ量の5倍以上の容量があります。
これによって内部に香りをたくさん溜めることができ、ワインの魅力である香りを最大限楽しむことができます。
リム
ワインを飲むときに口に触れる部分で、ボウルよりも狭くなっているのが一般的です。
リムが薄いほど口にスムーズにワインが流れ込むため、高級なグラスほどグラスが薄くなり割れやすくなる傾向があります。
乾杯!⇒パリンッ!みたいなこともありますので、高級なグラスをカチンと乾杯するのはやめておきましょう・・・。
乾杯の時は会釈しながらグラスを目線まで持ち上げるのがスマートです。
ステム
グラスについている足の部分で、手の温度が直接ワインに伝わらないように、持つ部分として設計されています。
指1~2本くらいしか入らない短いものから、ギュッと握りこめるような長いものまで様々です。
また高級なグラスメーカーでも、ステムの無いカジュアルなグラスを出していたりします。
ワインに手の温度を伝えたくないときには重宝しますが、大幅に味わいに影響はしません。
また、ステム以外を持ったらマナー違反!というわけでもありません。
詳しくはこちら >>ワイングラスの正しい持ち方とは?
プレート
ワイングラスを支える土台の部分です。
味わいには関わらないため割愛しますね。
購入なワイングラスが薄い理由
グラスを使用する目的として、口中にワインを流し込む方向をコントロールすると説明しました。
ただ、もし仮にグラスがビールジョッキくらい厚かったらどうでしょうか?
舌とワインの間に段差ができ、ワインが落ちるようになりますので、コントロールができなくなりますね。
グラスが薄ければ、スムーズに流し込むことができます。
また単純に厚みがあれば大きく口を開けなければ飲めませんし、口当たりも悪くなります。
高級なグラスが薄いのはこれらが理由で、とにかくワインをおいしく飲むことに特化しているからですね。
ワインを注ぐ量は最大でも1/5くらいまで
ここまでで解説したように、ワイングラスは香りを溜める目的があります。
そのため、なみなみと注ぐのは絶対NGです。
たまになみなみと注ぐ飲食店がありますが、そういう店ではあまり香り豊かなワインを置いてない事が多いため、神経質にならなくても良いでしょう。
私は過去に一度だけ、素晴らしい香りで繊細なワインを小さいグラスになみなみと注がれた事があります。
その時はさすがにイヤだったので、別のグラスをもらって少量ずつ注ぎ、香りを楽しみながら飲みました。
スタッフさんに知識がない場合はこのようなことも起きますが、悪気があるわけではないので、「よければ大きめのグラスをもうひとついただけませんか?」と聞くようにしましょう。
目安としては、最大でもボウルの容量の1/5まで。香りを楽しみたいなら1/10くらいでも良いです。
代表的なワイングラスと味わい
イメージが湧きやすい3種のグラスについて比較していきます。
名前 | ボルドー グラス | ブルゴーニュ グラス | シャンパン グラス |
形状 | チューリップ みたい | かなり丸い | 細くて高い or 平べったい |
ボウルの大きさ | 大きい | かなり大きい | 小さい |
リムの狭さ | 狭い | かなり狭い | 広い |
香りを 溜める量 | 多い | かなり多い | 少ない |
それぞれ見ていきましょう
ボルドーグラスの特徴
「ワイングラス」と聞いて真っ先に思い浮かぶであろう、チューリップの形をしたグラスです。
ボルドーと名付けられてはいますが、実際にはほとんどのワインに合う形状で、とりあえずこれで飲んでおけば間違いありません。
赤ワインは大きめ、白ワインは小さめのボルドーグラスに入れることが多いです。
ボルドーグラスの場合、ワインの液面は図のようにもっとも膨らんだところまでいれます。そのため、それより上の部分が香りを溜めるためのスペースとなります。
これがグラスを傾けると鼻に入ってきますので、しっかりと香りを感じられます。
口中へのワインの入りかたは前述のとおりで、勢いがつかないのでゆっくりと舌の上に広がります。
これによってワインの温度もゆっくりと上昇するため香り高くなり、タンニンによる渋みが少し和らぐので、飲みやすくなります。
ブルゴーニュグラスの特徴
風船のように膨らんだグラスがブルゴーニュグラスです。
主にピノ・ノワールというブドウ品種に適していて、酸味が多めで渋みが少なめなワインであればこのグラスが良いです。
また、ピノ・ノワールは香りが非常に繊細で優雅なため、大きなボウル部分にたくさんの香り成分を溜め込むことで、素敵な気分になれます。
ボウルの形が丸いため、ワインを飲むときに結構傾ける必要があり、それによってワインの流れに少し勢いがつきます。
そのため舌であまり広がらず、酸味がいきいきと感じられます。
ボウルがとても大きいことと、香りを溜めるスペースをしっかりとることから、初めて見たときは「ワイン少なっ!」と感じることでしょう。
余談ですが、私がこのグラスのことを親世代に話すときは「石原裕次郎みたいなワイングラスだよ」と話すことにしています。けっこう伝わります。(笑)
シャンパングラス
シャンパングラスは大きく2種類に別れます。
結婚式の乾杯で使うような縦長のグラスがフルート型、シャンパンタワーに使われる平べったいグラスがクープ型です。
◆フルート型
◆クープ型
現在はフルート型の方が主流なので、そちらを中心に解説します。
ここまで解説してきたボルドーやブルゴーニュグラスとは違い、ボウルが細く、リムが狭まっていません。
また、他のグラスでは香りを楽しむためにワインの液量は少なめでしたが、シャンパングラスは7~8割くらい注ぎます。
シャンパングラスの一番の目的は「泡を綺麗に見せること」であるため、そもそも液がないと機能を発揮できないと言うわけですね。
シャンパングラスがここまでに紹介したグラスと違うのは、見た目が重要な機能になっている点です。
これはクープ型も同様で、クープ型のように平べったいグラスであれば、飲むときに顔をほとんど動かさなくて良いです。
そのため、飲む動作をとても優雅にすることができるのです。
ワインだけではなく飲み手の優雅さも含めてグラスの設計をしているとは、すごいですね。
ワイングラスがない場合にコップで代用する方法
さて、ここまではグラスの特徴について見てきました。
いや、そもそもワイングラスを持ってないんですけど・・・。
そういう家庭、多いですよね。
もし持っていても1~2脚程度で、誰かと飲むと足りなくなる家庭が多いと思います。
そこで、ここからはワイングラスが無い場合、どうやって対応するかを考えてみます。
結論としては、丸みがあって大きくて薄いコップにちょっとずつ注いで飲もう!ということになります。
家庭にあるものを思い浮かべながら読んでみてくださいね。
できるだけ大きくて丸みのあるものを選ぶ
まずは一番大事な香りを楽しむために、コップの大きさと形を考えましょう。
コップは口が開いているものが多いため、これでは香りを溜め込む事ができません。
また当然ですが、容量が小さければ香りを溜める量も少なくなります。
ベストは大きくて丸みのあるものですが、そんなコップがない場合はとりあえず大きいコップ(横幅が大きいのではなく、高さがあるもの)を選びます。
小さいコップであれば、注ぐ量で工夫します。
できるだけ薄いものを選ぶ
これもグラスの構造のところで解説しましたが、厚みはワインの口中での広がりに関わります。
マグカップのように厚いものよりも、ガラスのコップを使うと良いでしょう。
ただ、前述した香りほど劇的な変化は無いので、コップの大きさや形を優先し、厚みは最後に気にするくらいで良いです。
注ぐ量を少なめにする
ワイングラスは1/5~1/10くらいの容量を注ぐのでしたね。
コップの場合、ワイングラスよりも香りを溜める効率が悪いので、1/10くらいの量を注ぐようにしましょう。
マグカップが250mlくらいなので、ボトル一本を30回くらいに分けてちびちびのむ計算です。
面倒な気もしますが、コップに半分くらいワインを注ぐ場合よりも圧倒的に香りが立ちます。
途中から面倒になったらざーっと注いでも良いので、最初の方だけでもやってみてください。
初心者にオススメのワイングラス
100均で売っているおすすめワイングラス
ワインにお金をかけたくない!という人向けに、最近ではダイソーでもかなり良いグラスが売られていて、とてもオススメできます
ただし、ホームページを見てもらうとわかりますが、人気のため全国的に品切れでいつ買えるかはわかりません。
そのため、別のお店で探してもらう必要がありますが、以下の点を参考にしてみてください。
- できれば容量は300mL以上(最低250mL以上)
- ステムはあってもなくても良い
- できるだけ丸みのあるものを選ぶ
100円くらいのものを通販で探して紹介しようと思いましたが、送料を考えるとオススメできるものがありませんでした。すいませんが実店舗で探してみてください。
1000円台のおすすめワイングラス (木村硝子 ピッコロ)
個人的にかなりおすすめのグラスがこれです。
赤ワイン、白ワインはもちろん、スパークリングワインの泡も綺麗に見えますよ。
スタンダードな形状ですが丸みもしっかりめなので、繊細なワインにも使えます。
低めなワイングラスなので取り回しもよく、普通の食器棚にも余裕で入ります。
手に馴染むので割れにくく、おすすめの逸品です。炭酸水を飲んでもおしゃれだと思います。
ワインを特別においしくする大きなボルドーグラス
安くはありませんが、立派な大きさで高さもあるため、香りを溜める能力はばっちりです。
ボルドータイプのグラスなので赤ワインであればなんでも使え、活躍の機会は多いです。
良いワインを開ける時のために、1脚あっても良いでしょう。
ワイングラスはリーデルなら間違いないと思います。
かなり大きいので、購入前に食器棚の確認をするようにしてください。
まずは家にある食器で工夫して飲んでみて、「ワインっておいしい!」と思えたら
ワイングラスを買ってみると良いと思います。
それでは楽しいワインライフをお過ごしください!
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