ちょっとワインに興味が出てきても、「同じ品種なのに味が違う。でもなぜだかわからない。」というふうに感じ、難しいなと思ってしまいませんか?
これは多くの場合ワインの作り方の差が出ているのですが、これを細かく分析するのはプロでも至難の技。初心者ができるはずありません。
結論、初心者はワインの味わいをつかめないのでしょうか?
実はそうではありません。
細かな技術をブラインドでとらえるのは難しいですが、ワインの説明を見ながら「こういう作り方だから、こういう味わいなのかな?」と捉えることは、少し知識があれば誰でもできます。
今回は「ワインの作り方はこれだけわかってれば充分!」という範囲に絞って解説します。
また最後に次の2つのワインも紹介しますので、これを飲んで木樽の香りを感じられるようになると、ワインを飲む時に今以上に楽しめるようになりますよ。
◆木樽の香りを感じるワイン
◇木樽を使っていないワイン
なお赤ワインの味わいを覚えるには作り方だけでなく、ブドウ品種の特徴も覚えておくと良いでしょう。
次の記事で詳しく解説していますので、あわせて読むとすぐに赤ワインを選べるようになると思います。
赤ワインの作り方 各工程を初心者向けに解説
赤ワインは、黒ブドウを使って作りますが、少しだけ白ワイン用の白ブドウをブレンドするものもあります。
赤ワインの作り方を細かく解説しますが、ざっくり全体像をとらえてもらうために1枚の図にまとめてみました。
「最低限だけ分かれば良い」という方は、次の図だけ見て、以降の説明は飛ばしてしまっても問題ありません。
収穫、除梗、破砕
収穫したブドウをチェックし、健全なものを選んで選り分けてから潰します。
この時ブドウの実だけを残す場合が多いですが、房ごとまとめてワインに使う場合もあります。
ワインを作る酵母はブドウの果皮に付いていますが、アルコールの原料となる糖分はブドウの果肉にあります。
しっかりと潰してから混ぜることで、糖分と酵母がふれあい、アルコールを作る準備が整います。
主発酵、醸し
破砕したブドウを置いておくと、酵母の働きによって糖分がアルコールに変わります。
また、果皮に含まれている色素や種に含まれている渋み成分(タンニン)が徐々に溶け出してきて、味わいが豊かになってきます。
主にアルコールを作るのを主発酵、その後に色々な成分を溶け出させる工程を醸しと言います。
ちなみに、アルコール発酵を行う前に色々な成分を抽出しようとしても、一部の成分はほとんど抽出できません。
ブドウの中には水っぽい成分と油っぽい成分が存在していて、例えば色素は水っぽいので水だけでも抽出できますが、渋み成分は油っぽいのでほとんど抽出できません。
渋み成分を抽出するためには、先にアルコール発酵してエタノール水溶液にしておき、抽出力の高いエタノール水溶液で抽出する必要があるのです。
このような性質を利用し、渋みを抑えつつ色素を最大限抽出した「黒ワイン」なるものもあります!
圧搾
醸しまで終わったワインの素は、果肉や果皮も含めてぐちゃぐちゃの状態になっています。
ずっとこのままでいると色々な成分が出すぎてしまい、飲めたものではなくなります。
いい感じのところでぐちゃぐちゃのものを押し潰し、液体だけを取り出します。
マロラクティック発酵
この工程では、乳酸菌の働きによってワイン中のリンゴ酸を乳酸に変えます。
リンゴ酸はかなり刺激が強いのですが、この工程によってマイルドな乳酸に変わり、口当たりが滑らかになります。
また、この工程を挟むことでヨーグルトやバターのような乳製品の香りが出てきて、ワインの香りをより複雑にします。
※ほとんどの赤ワインでこの工程を実施しますが、初心者がイメージしづらい工程のため、製造工程をまとめたイラストからは除外しています。(スペースの都合もあります)
熟成
さきほど取れた液体はまだまだ色々な成分が溶け出しており、味にまとまりがない状態です。
ワインを大きな樽やタンクの中で一度寝かせてあげて、味を落ち着かせるために熟成をさせます。
赤ワインであれば木の樽を使うことが多いですが、ステンレスやコンクリートの樽を使うこともしばしばあります。
熟成中に、細かい沈殿が下にたまっていきます。
滓引き
ワインをしばらく熟成させておくと、ワイン中の成分が沈殿として出てきます。
この沈殿は滓(おり)と呼ばれますが、このままでは渋みの強すぎるワインになるため、滓をとってあげます。
この時点ではろ過はせず、明らかに沈殿しているところだけ残し、上澄みを取ります。
清澄・ろ過
さきほどの工程で滓はざっと取りましたが、ワインはまだまだ色々な成分を含んでいて濁っています。
余分な成分を取るため、清澄剤を入れてきれいにします。清澄剤には卵白などが使われます。
そのあとろ過もすることで、余分な微生物を除去します。
ワインで有名なボルドー地方にカヌレというお菓子がありますが、「清澄の時に卵白を大量消費するから、卵黄で何かできない?」という発想で生まれたお菓子です。
瓶詰め
ワインを瓶に詰める作業です。このとき瓶の中に余分な酸素が入らないよう、窒素を吹き付けたりして管理するのが一般的です。
初心者でもわかる木樽の香り まずはここを覚えよう!
ここまでワインの作り方を見てきました。
細かく言えば全ての工程が味わいに影響しますが、影響度合いには大小があります。
あまり味わいに影響しないところを初心者が覚えても楽しくないので、初心者が最も気づきやすく、すぐにワインチョイスに応用できる木樽の香りに絞って解説します。
とりあえずここだけ覚えれば楽しくなりますので、頑張ってください。
発酵~熟成で木樽かステンレスタンクかの違いによる木の香り
木の樽を使ったワインの場合、ブドウの香りに加えて木の樽由来のスパイスっぽさや、バニラっぽさが出てきます。
また酸味も少し丸くなるので、「複雑な香りがしつつ、まろやかな味わいのワイン」となります。
初心者はワインの酸味が苦手な人も多いため、まろやかさがある木樽を使用したワインが好きな人は多いです。
一方、赤ワインではそれほど多くはありませんが、ステンレスタンクを使った場合は果実の香りと酸味がダイレクトに伝わるフレッシュな印象のワインになります。
お店で選ぶとき、説明文に「シナモン」「ナツメグ」「クローブ」「バニラ」などのワードがあれば木の樽を使ったワイン、そうでなければステンレスタンクのワインであることが多いです。
(木樽の香りを感じるワイン)シャトー モンペラ ルージュ
有名なワイン漫画「神の雫」で「オーパス・ワン(アメリカの6万円のワイン)」よりもおいしい!と表現された、有名なワインです。
実際にはモン・ペラで超よくできた年があって、その年のモン・ペラとオーパス・ワンを飲み比べたらモン・ペラの方がおいしかった。というオチです。
なのでさすがに普通の年であればオーパス・ワンの方がおいしいですが、それでもモン・ペラは常に値段以上のおいしさがあります。
味わいも特徴的で、スモーキーな木樽の香りをしっかり感じるため、「木樽ってどんな香り?」という人にはピッタリです。
(ステンレスタンクのワイン)J.P.ムエックス ボルドー シグネチャーラベル クリスチャン ムエックス
シャトー・ペトリュス(100万円のワイン)を手掛けるムエックス社が作る、手が届きやすくもおいしいワインです。
木樽を使っていないため、果実の香りを中心にしたシンプルな味わいかと思いきや、熟成の影響もあってか複雑な香りを出しています。
木樽の有無を勉強するだけでは面白くないと思いますので、樽の香りはないものの単純においしいワインを選んでみました。
今回は赤ワインの作り方について解説しました!
初心者の人はまず木樽の香りを感じられるようになると、一気にワインを楽しめるようになりますよ!
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