「ワインの酸味が苦手」「アルコールが高くて苦手」と思っていませんか?
これはワインを飲めない理由としてよく挙がるものです。
これを一気に解決できるワインがあるとしたら興味が沸きませんか?
ずばり、それは甘口ワインです。
甘口ワインは酸味とアルコールがひかえめなものが多いため、ワインが苦手な人でも飲みやすく、初心者におすすめできます。
今回は独自の魅力をもった甘口ワインについて、J.S.A.ワインエキスパートの私が解説します。
甘口ワインの作り方を知れば味わいがイメージできる
甘口ワインと辛口ワインの差は、作り方がわかればすぐにわかります。
甘口といってもワインの製造工程で砂糖を入れるわけではなく、辛口のワインの作り方を少し変えるだけ。
辛口のワインと比較しながら見ていきましょう。
厳密に言えば、法律で特例として認められている一部のワインや格付外ワインでは、製造時に糖分を添加しているものもあります。
これらは初心者におすすめしにくいため、今回は除外して解説します。
ブドウの糖分とアルコール度数・ワインの糖分の関係を知ろう
一番重要な要素として、次の関係を理解してください。
アルコール度数+ワインの甘み(残糖) = ブドウの糖分
基本ですが、ブドウジュースを発酵させてお酒にしたものがワインです。
この時に起こる発酵は「アルコール発酵」といい、ブドウ中に含まれる糖分を微生物の働きでエタノールに変化させます。 つまり、エタノールの原料はブドウ中の糖分です。
一方、ワイン中の糖分はどこからくるでしょうか?
当然ですが、ブドウの糖分ですね。※ほとんどの場合、砂糖を追加することは法律で禁止されています。
つまり、ブドウの糖分を全てエタノールに変えてしまった場合は辛口ワイン、一部を糖分のままに起こしておけば甘口ワインになります。
甘口ワインは発酵を途中で止める。辛口ワインは止めない。
先ほど説明したように、ブドウの糖分を全て発酵すれば辛口、一部残しておけば甘口になるのでした。
それではどうすればこの差を作ることができるでしょうか。
答えは、発酵によってエタノールを作っている途中で菌を除去して止めるか、最後まで発酵させるかの違いです。
菌を除去(もしくは活動停止)する方法は次の通りです。
- ろ過をして菌を除去する
- 発酵中に冷やす
- 亜硫酸を体調に入れて菌を死滅させる
甘口ワインはアルコール度数が低いものが多い
アルコール度数とは、言い換えればエタノールの量です。
前述のように、甘口ワインはエタノールを作っている途中で発酵を止めるわけですから、普通のワインよりもエタノールが少なくなりますね。
そのため、アルコール度数が低くなりやすいです。次の図でイメージしてください。
辛口ワインは平均12%程度ですが、甘口ワインは8%程度のものが多く、お酒に弱い人でも飲みやすいです。
甘口ワインの種類を甘さ別に紹介
甘口ワインは発酵途中で菌の働きを止め、糖分を残すのでした。
早い段階で止めればその分糖分が残る、甘くてアルコール度数の低いワインとなります。
一方、遅く止めれば糖分があまり残らずアルコール度数の高いワインができます。
それでは、ワインを甘くするためにはアルコールを低くするしかないのでしょうか?
答えはNOで、ブドウ自体の糖分を高めれば、高いアルコールと高い糖分を両立できるのです。
甘口ワインでは、ブドウの糖分をいかに高めるか、その栽培方法によって大きく種類が分かれます。
貴腐ブドウを使ったワイン(激甘なデザートワイン)
一番甘いのは貴腐ワインです。
樹になったブドウに貴腐菌というものがつくと、ブドウの水分が抜けてミイラ化(貴腐化)します。
ブドウはほとんどが水分ですから、水分が抜ければ他の成分がギュッと凝縮され、糖分の割合が跳ね上がります。
こうして作られた貴腐ブドウを使うと、ケーキの甘さにも負けない貴腐ワインが出来上がります。
完熟ブドウを使ったワイン(しっかり甘い)
貴腐ワインほどではありませんが、ブドウを完熟させて作るワインもしっかり甘いです。
意外と知られていませんが、ワインに使うブドウは酸味が重要なため、ある程度成熟したら収穫してしまいます。
成熟期間が長いほど酸味がなくなってしまうので、通常のワインはあえて早めに収穫します。
また、ヨーロッパは比較的寒いため、そもそも気温が足りず完熟しない場所も多いです。
しかし果物は当然完熟させる方が甘くなるのはご存じの通り。完熟ブドウを使用すると酸味が穏やかで甘口なワインになります。
普通のブドウを使ったワイン(やや甘い)
普通のブドウを使う場合でも、前述したように発酵を途中で止めることでやや甘口なワインが出来上がります。
なお普通のブドウと言っても辛口ワイン用のブドウより遅摘みにし、果実の成熟度をやや上げて糖分を多めにすることが多いです。
こうやってできたワインは「酸味は苦手だけど、デザートではなく食事と合わせて飲みたい」という要望にマッチ。
初心者が苦手なワインの酸味だけを取り除いたような味わいですね。
特殊な作り方をする甘口ワイン
代表的なものは既に説明しましたが、一部特殊な甘口ワインもあるためそれをご紹介します。
アイスワイン
主にドイツのような寒冷地で生産される激甘ワインで、樹上で凍ったブドウを潰して作ります。
樹にブドウの実がなった状態で厳しい寒さに晒されると、ブドウの実が凍結。
この時凍るのは水分だけでブドウのエキスは凍らないため、凍ったまま潰せばブドウのエキスだけを得ることができます。
これによって濃厚な糖分を含むジュースを得ることができるため、非常に甘いワインを作ることができます。
クリオ・エクストラクション
ブドウの実を低温にし、人工的にアイスワインを作る方法です。
初心者におすすめな甘口ワインを紹介
ここまで甘口ワインの作り方について見てきましたが、初心者にオススメな甘口ワインを用途別に紹介します。
甘さLv1 食事に合わせて! シャトー・デレスラ トカイ セミ ドライ
料理に合わせたいのであればやや甘口がおすすめ。通常のブドウを使用して発酵期間を短くしたワインです。
このワインは成熟した白ブドウから出るリンゴや洋ナシの香り、はちみつの香りを持ちつつ酸味も穏やかです。
一方でしっかりとしたミネラル感や適度な酸味が感じられるため、甘すぎず後味すっきりという印象。
ほとんどの前菜・アラカルトメニューに合わせやすい逸品で、Twitterでプチバズり中です。
甘さLv2 単体・食事と共に! サッポロビール グランポレール 余市ケルナー <遅摘み>
日本ワイン特有の「どんな料理にも合わせやすい」という性質を持ちつつ、しっかり甘さがあるため単体でも飲めてしまうワイン。
北海道の余市でケルナーというブドウを育てており、収穫を遅らせることでしっかりと成熟させています。ご存じサッポロビールが製造しています。
「ビール会社だからワインの品質は高くないでしょ?」と思ってしまうかもしれませんがとんでもない。他の産地の同価格帯ワインと比べても全く引けを取りません。
遅摘みすることでブドウをしっかり成熟させ、リンゴ・洋ナシ・モモのような優しい香りを引き出しつつ、適度に酸味を残すことで後味は甘ったるくありません。
同じ余市ケルナーで、「遅摘み」表記のない辛口ワインもあります。辛口も参考に載せておきますので間違えて買わないように注意してください。
辛口は辛口で素晴らしい味わいなので、間違えて買ってしまっても損はしません。
甘さLv3 デザートのお供や単体で飲んでも! ユルツィガー ヴュルツガルテンシュペトレーゼ
ドイツワインの甘さ基準で「シュペートレーゼ(完熟ブドウ)」に分類されるワイン。
ドイツワインの甘さ等級としては上から5つ目ですが、カルピスなどのジュースより普通に甘いです。
いちごタルトのようなフルーツ中心のケーキであれば、甘さで負けることもなく合わせることができ、単体で飲んでもおいしい逸品。
もも・マンゴーのような熟した甘い香りと、蜜のようなとろみのある味わいで、初心者でもおいしく飲めます。
甘さLv5 シロップにも使える!シャトー シシェル ソーテルヌ
こちらは世界三大貴腐ワインと呼ばれるフランス ボルドー地方のソーテルヌ地区で作られる貴腐ワイン。
非常に甘く、おすすめなのは市販のバニラアイスと合わせて飲むこと。
まるで香水のような匂いがするブドウシロップをかけたような味わいになり、非常に奥行きがあるアイスに変身します。
ハーフボトルなので量は控えめですが、基本的に貴腐ワインは50mLくらい飲めばほとんどの人が満足するため、むしろ通常のワインより長持ちします。(冷蔵庫なら1か月くらいは持ちます)
製造ワイナリーは不明ですが、販売元は非常に有名な会社なので安心できますし、中身はソーテルヌ地区で最も有名なワイナリーの格落ち品という噂もあります。
ソーテルヌで最も有名なのは間違いなくシャトー・〇ィケムですが、それだと20倍くらい値が張ります・・・。
いかがでしたか?
甘口ワインは酸味もなく初心者にオススメなものが多いですが、いきなり激甘な貴腐ワインにチャレンジすると「甘すぎ!」となることもあります。
ほどよい甘口から挑戦し、自分に合った甘さを見つけてくださいね!
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