ワインを飲み始めた人が最初に気になる産地、ボルドーとブルゴーニュ。
いずれもフランスの地方ですが、ワイナリー(シャトー)の名前が書いてあってわかりやすいボルドーと違い、ブルゴーニュワインってとにかくわかりにくいです。
実はブルゴーニュの場合、法律に関連する要素を大きく書き、ワイナリー情報を小さく書くためわかりにくくなっているのです。
ブルゴーニュは地域名⇒村名⇒畑名と格付がされていて、畑の格付け×ワイナリーの技術で味わいが決まります。
ブルゴーニュワインのルールと特徴を知り、好きなワインを選べるようになりましょう!
ブルゴーニュで栽培されているブドウ品種
フランス東部のブルゴーニュ地方。
まずはどんなブドウで作られているのかを知ることで、どんなワインが作られているのかを理解することができますよ。
ピノ・ノワール
フレッシュなラズベリーのような甘酸っぱい香りと、バラやゼラニウムのような豊かな香りを持つブドウ。
酸味は豊かだが渋みが控えめで非常に繊細でエレガントなワインになるため、高級ワインに使われます。
ブルゴーニュ地方全域で栽培されていますが、特に北半分のものが高品質で、特にロマネ・コンティを始めとするコート・ド・ニュイ地方のものは別格の品質を誇ります。
ガメイ
ボジョレー・ヌーボーに使われる品種で、ピノ・ノワールによく似た特徴を持ち、香りがやや劣り渋みがわずかに強い品種。
栽培しやすいためガメイを使ったワインは安価になることが多いものの、味わいが大幅に劣るということはなく、ソムリエ・ワインエキスパート一次試験通過者でも、かなり高い確率でピノ・ノワールと間違えるほど。
北部では大昔の領主が植えるのを禁じていたため、主にブルゴーニュ南部で栽培されています。
シャルドネ
白ワインの女王と呼ばれ、香り自体は控えめなものの果実の成熟度合いに応じて柑橘のようなから桃のような果実まで幅広い香りをもつ品種。
製造方法によって味わいが変わりやすい品種のため、ワイナリーごとで味わいが大きく変わります。
ブルゴーニュ全域で栽培されている品種で、ブルゴーニュで栽培している白ブドウのほとんどはシャルドネ。
最高級のものは100万円をゆうに越え、最高級白ワインに使われています。
アリゴテ
シャルドネよりも酸味がしっかりしていて、ミネラリーでキレのある味わいが特徴。
地域名の格付け(ブルゴーニュ アリゴテ)はキリッとした印象になる一方で、ブーズロン村の村名格付アリゴテはコクのあるリッチな味わいとなります。
手の届きやすい価格のものが多くブルゴーニュ全域で栽培されているものの、栽培量はシャルドネの15%ほどしかない品種です。
ブルゴーニュ地方の格付けは畑の質によって決まる
ブルゴーニュ地方では、ブドウを栽培している畑のレベルに応じて格付けがなされています。
間違いやすいですが、「ワインの品質」で格付けが決まるわけではないので注意しましょう。
実際の格付けを見ながら説明します。
図のように、上から順にグラン・クリュ(特級畑)、プルミエ・クリュ(一級畑)、村名、地域名となっています。
それぞれの階級は次のように決められており、①規定を満たす畑で②規定を満たす製法を行った場合 のみ、それぞれの格付けを名乗ることが許されます。
格付 | 要約 |
特級畑 | 土壌、畑の向き、傾斜、気候、その他全てにおいて最高クラスと国が認定した畑 |
一級畑 | 特級畑ほどではないが、極めて優良と国が認定した畑 |
村名 | その村を代表するレベルであると国が認定した畑 |
地域名 | 上記いずれにも満たないレベルの畑 |
上記格付けを名乗りたければ、ワインに使うブドウはその格に対応したブドウのみで作られたものでなければいけません。
格付 | 要約 |
特級畑 | 他の畑から取れたブドウは使ってはいけない |
一級畑 | 他の畑から取れたブドウは使ってはいけない |
村名 | 同じ村の村名クラス畑から取れたブドウなら混ぜることができる |
地域名 | 同じ地方で取れたブドウなら、どの畑で取れたブドウでも混ぜてOK |
製法については規定が多すぎるので詳細は省きますが、例えば使用可能なブドウ品種が規定されています。
ブルゴーニュワインの味わいを決めるもの
前述したように、格付けはあくまでも「畑の素晴らしさランキング」でした。
もちろん上位の方がおいしいワインにはなりやすくなりますが、そう単純な話ではありません。
例えば、①最高級イチゴを使ってパティシエ見習いが作ったケーキ と ②普通のイチゴを使って鎧塚シェフが作ったケーキはどちらがおいしいと思いますか?
おそらく②ですよね。
特級クラスの畑を使っても、ブドウの栽培が下手だったり、ワイン造りが下手なものはおいしくなりません。
ブルゴーニュワインの味わいは、次の公式で決まると覚えておきましょう。
ブルゴーニュワインの味わい = 畑の格付け × 造り手
ブルゴーニュワインのおいしさは格付け×造り手(ドメーヌ)で覚える
先ほど示したように、ブルゴーニュワインは畑の格付けと造り手の技術で味が決まります。
おいしいワインを覚えておきたければ、どちらか片方だけを覚えるのではなく、必ず組み合わせを覚えておきましょう。
ワインラベル(エチケット)に目立つように書かれているのは格付けなので、作り手の情報を意識して見るようにしましょう。
ラベルの読み方のイメージがつかない方向けに、こちらの記事で詳しく解説しています。
ブルゴーニュの主な生産場所
ここまでブルゴーニュワインのイメージを説明しましたが、代表的な産地についても覚えておくとおいしいワインを選びやすくなります。
シャブリ地区
シャルドネを使った白ワインの産地で、赤ワインは存在しません(赤は「シャブリ」と名乗れない)。
グラン・クリュ、プルミエ・クリュの格付けは、木樽を使って様々な香りをワインに与え、非常にリッチで高級感があります。
一方で村名、地区名クラスはステンレスのタンクを使用し、爽やかな果実味のするミネラリーでキレのある味わいです。
世界的にも大人気の地区ですが、村名以下は手が届きやすい価格でハズレも少ないため、初心者にもおすすめできます。
こちらのレビュー記事に地域の特徴も詳しくまとめていますので、あわせてご覧ください。
コート・ド・ニュイ地区
ブルゴーニュ地方の中でも最も有名な地区で、ロマネ・コンティやルロワのミュジニーをはじめとして、一本100万円を越えるようなワインがゴロゴロしている特別な産地です。
ヴォーヌ・ロマネ村とジュヴレ・シャンベルタン村を筆頭に、北から南まで素晴らしい村が並びます。
ピノ・ノワールから作られる赤ワインが多いですが、少量作られる白も高級なものがあり、ワイン好きの憧れの地区と言えるでしょう。
村名クラスであれば5000円程度から購入できますが、プルミエ・クリュ以上だと万単位のお金がかかります。
しかし味わいは格別の物が多く、一度は飲んでみて欲しい地区です。
コート・ド・ボーヌ地区
コート・ド・ニュイほどではありませんが、こちらも高級ワインの産地で、特に白ワインで有名なものが多いです。
ムルソーやモンラッシェなど有名な白ワインが多数あり、ハチミツやバニラの香りがするリッチなタイプから、キレのある爽やかなタイプまで様々です。
また赤ワインもポマールやボーヌといった有名産地がたくさんあり、コート・ド・ニュイよりもしっかりした味わいで長期熟成向きのワインが多いです。
コート・シャロネーズ地区
他地域に比べると高価ですが、ここより南は一気に手が届きやすい価格になります。
メルキュレ、ブーズロンをはじめとして5つの村名が存在するコート・シャロネーズ。
赤ワイン・白ワイン共に優良なものがあります。
複数のプルミエ・クリュが存在するものの5000円以下で買えるものが多く、一般人でも手が出せるレベルです。
味わいのレベルは玉石混合で、ハズレを引く可能性も多少あります。
マコネ地区
ここまでの土地と比べるとかなり温暖な産地で、気候の関係でピノ・ノワールよりもガメイの生産量が多いです。
栽培しやすいガメイが主要品種になることもあり、高級ワインは少なく、低価格で品質の高いワインが多数。
温暖な産地のため渋みや酸味がマイルドなものが多く、価格も含めて初心者にも飲みやすいワインの産地と言えるでしょう。
ボージョレ地区
ボジョレー・ヌーボーがあまりにも有名なボージョレ地区。マコネと同じくガメイを多く栽培しています。
日本ではヌーボー(新酒)以外はマイナーですが、クリュ・ド・ボージョレなどガメイを使った通常のワインの方が多く、コスパ良く飲めることで知られています。
「華はないががっしりしたピノ・ノワール」のような味わいで、飲んでみると品質の高さに驚くことがあります。
ブルゴーニュワインは極端なインフレが起きている
高級なものが多いワインですが、世界的に見てもブルゴーニュワインは別格です。
ワインの価格高騰の原因は次の記事を読むとわかりますが、重要なのは希少性。
ここまで説明したように、ブルゴーニュワインは畑×造り手の組み合わせでワインが作られており、種類が非常に多いです。
しかしブルゴーニュは他の産地と比べて生産量が多いわけではない(同じフランスのボルドー地方の1/3ほどしかない)ので、種類が多いと一種類ずつの生産数は少なくなります。
つまり、ブルゴーニュワインは希少性が高まりやすいのです。
そのため世界中のお金持ちや投資家が買い漁り、ブルゴーニュワインは他の地域よりも明らかに高騰がすすみます。
初心者にオススメなブルゴーニュワイン
値段の上昇もありますが、探せばおいしいワインが見つかります。
ある程度手を出しやすい価格帯で、おいしかったワインをご紹介します。
ルイ・ジャド コトー・ブルギニョン
ガメイ種で作ったワインですが、ピノ・ノワール種と間違えるくらいよくできたワインで、価格もブルゴーニュとしては手ごろ。
ガメイを使った典型的なワインで、ソムリエ・ワインエキスパート試験のテイスティング練習にはもってこいのワインです。
ブルゴーニュワインの味わいを知り、なおかつ飲みやすいワインを求めているのであればピッタリです。
ルー・デュモン ブルゴーニュ ブラン
日本人である仲田さんがフランスにわたって立ち上げたドメーヌ。価格の割にとてもしっかりしたワインを造っています。
樽の香りをほんのり感じ、飲みやすいながらも高級感のあるワインに仕上がっています。
アンヌ・フランソワーズ・グロ ブルゴーニュ ルージュ
ブルゴーニュを代表する造り手で、村名としても使えるレベルのブドウを地域名に格下げして生産しています。非常に高品質なワインです。(一昨年は3500円で買えたのですが・・・)
地域名レベルのワインでよくある「なんか薄い・・・?」という感じが全くなく、「良いワインを飲んでいるなぁ」と感じることができます。
コート・ド・ボーヌ地区のポマールという土地のブドウを使っているため、実際にはここの村名ワインのようなレベルです。
スター生産者の村名ワインと考えればかなりお買い得!
ルー・デュモン ラドワ ルージュ
前述したデュモンの村名格付けのワインです。本人も「この銘柄はコスパが良い」と言っているように、価格に見合わない品質を持ったワイン。
日当たりのよい土地のため果実の成熟度も高く、しっかりと果実味が感じられます。
ブルゴーニュはある程度若いワインの方が飲みやすいため、10年以内に作られたものを選ぶと良いでしょう。
いかがでしたか?
ワイン界で最も有名と言えるブルゴーニュ地方、一度は飲んでみると良いですよ。
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